マッチング成立率を上げる「ニーズヒアリング」の型
ニーズヒアリングというのは、相手の要望を聞き取って、本当に必要なものを見極める作業です。人と人、人と仕事をつなぐ仲介者にとっては、ここがうまくいくかどうかで成立率がガラッと変わります。ただ、「要望はちゃんと聞いたのに、なぜか喜ばれない」と悩んでいる人はけっこう多いものです。
この記事では、次の3つをお伝えします。
- なぜ「言われた通りに紹介」すると失敗しやすいのか
- 相手の本当の動機を引き出す「5W1H変換ヒアリングフレーム」の使い方
- 今日からそのまま使える、質問の言い換え例
まずは、多くの仲介者がつまずく「あるある失敗」から見ていきましょう。
「言われた通りに紹介したのに、なぜか喜ばれない」その正体
たとえば、ある依頼者から「英語が話せる人を紹介してほしい」と頼まれたとします。あなたは条件にぴったり合う、語学が堪能な人を見つけて紹介しました。ところが、後から「思っていたのと違った」と言われてしまう。こんな経験はありませんか。
よくよく聞いてみると、依頼者が本当に求めていたのは「海外の取引先と信頼関係を築くこと」でした。必要だったのは語学力そのものより、相手国の商習慣を分かっている人だったんです。「英語が話せる人」という言葉だけを受け取った結果、肝心の目的とズレてしまったわけですね。
これは「御用聞き型」と呼ばれる失敗です。御用聞きとは、相手が口にした注文をそのまま受けるだけの聞き方のこと。一見ていねいに対応しているように見えて、相手も気づいていない本当の課題を取りこぼしてしまいます。
要望には「顕在ニーズ」と「潜在ニーズ」がある
なぜこういうズレが起きるのか。それは、要望には2つの層があるからです。
ひとつは「顕在ニーズ」。相手が自分で「欲しい」と自覚して、言葉にしている要望です。さっきの例なら「英語が話せる人」がこれにあたります。もうひとつが「潜在ニーズ」。こちらは相手本人もはっきり気づいていない、奥にある動機を指します。「取引先と信頼を築きたい」という部分ですね。
やっかいなのは、本当の目的を最初からきれいに言葉にできる人が意外と少ないこと。多くの人は、頭に浮かんだ手段のほうを要望として口にします。だから口に出された言葉だけを聞いていると、肝心の目的を取りこぼしがちなんです。
仲介者の仕事は、注文を右から左へ流すことじゃありません。表面の言葉の奥にある本当の目的を読み取って、両者にとって最適な相手へ「翻訳」してあげること。この潜在ニーズをつかめるかどうかが、成立率の分かれ目になります。
潜在ニーズを引き出す5W1H変換ヒアリングフレーム
では、どうすれば潜在ニーズにたどり着けるのか。私がおすすめしたいのが、言われた要望(What=何が欲しいか)を起点にして、6つの問いで分解していく「5W1H変換ヒアリングフレーム」です。
5W1Hとは「いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どうやって」の6つの視点のこと。これを相手の要望にあてはめて、ひとつずつ問い直していきます。
| 問い | 聞くこと | 引き出せるもの |
|---|---|---|
| What(何が欲しい?) | 口にされた要望そのもの | 出発点。ここから掘り下げる |
| Why(なぜ?) | なぜそれが必要なのか | 本当の動機。最優先で掘る |
| Who(誰のため?) | 本人のためか、その先の相手のためか | 紹介相手の選定軸 |
| When(なぜ今?) | いつまでに、なぜこのタイミングか | 緊急度とその背景 |
| Where(どの場面で?) | どんなシーンで使うのか | 要望の前提条件 |
| How(どうやって・どの程度?) | 予算感や実現手段、制約 | 後のトラブル防止 |
起点となるWhatは、相手が最初に口にした要望。そこから残りの5つで掘り下げていきます。なかでもいちばん大事なのが「Why(なぜ?)」です。「なぜそれが必要なんですか」と一歩踏み込むだけで、語学力という要望の奥にあった「信頼構築」という本当の目的が見えてきます。
この「表面から本質へ降りていく」考え方は、営業の世界でも実績がある方法です。ニール・ラッカムが提唱した「SPIN話法」は、状況→問題→影響→解決の順に質問を重ねて本音を引き出す型として知られています。順を追って奥へ降りていくという発想は、このフレームと同じです。
そのまま使える質問の言い換え例【Before→After】
フレームの考え方が分かったところで、具体的な質問の言い換えを見てみましょう。コツは、What型(何が欲しいか)の質問を、Why型(なぜそれが欲しいか)の質問に変えることです。
たとえば「どんな人が欲しいですか?」というWhat型の質問。これを「その人に最終的に何を実現してほしいですか?」というWhy型に変えてみる。
「ご予算はいくらですか?」も同じです。「その予算で、どんな状態になれば成功と言えそうですか?」と聞くと、ぐっと奥に踏み込めます。
After側の質問は、はい・いいえで答えられない「オープンクエスチョン」になっています。相手に自由に語ってもらうための問いかけですね。逆に「来月開始で大丈夫ですか?」みたいな、はい・いいえで答える質問は、最後の確認に使う。そうするとすれ違いを防げます。
もうひとつ大切なコツがあって、相手が話してくれたら「つまり◯◯がしたいということですね」と要約して返してあげてください。「ちゃんと聞いてくれている」という安心感が生まれて、相手はさらに本音を話しやすくなります。私自身、この一言を挟むようにしてから、相手の口数が明らかに増えました。
まとめ:成立率は「Whatを聞く力」より「Whyを聞く力」で決まる
要望には、口に出された顕在ニーズと、本人も気づいていない潜在ニーズの2層があります。言われた言葉どおりに紹介すると、この潜在ニーズを取りこぼしてミスマッチが起きてしまう。そこで役立つのが、要望を「何を・なぜ・誰のため・なぜ今・どの場面・どうやって」の6つで問い直す5W1H変換フレームです。なかでも「なぜ?」を一問足すだけで、見える景色が大きく変わります。
まずは次のヒアリングで、いつもの「何が欲しいですか?」を「それで何を実現したいですか?」に変えてみてください。たった一問の違いですが、ここが成立率を押し上げる第一歩になるはずです。最初はぎこちなくて当然なので、まずは一問だけ試すくらいの気持ちでどうぞ。
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