マッチングビジネスのニッチ選定|勝てる市場の見つけ方
マッチングビジネスとは、商品やサービスを「探している人」と「提供したい人」をつなぎ、取引が成立したときに手数料を受け取る仕組みです。「ニッチ選定」とは、どの市場で誰と誰をつなぐかを最初に決める作業を指します。
ただ、最初の一歩で「どの市場を選べばいいのか分からない」と手が止まる方も多いのではないでしょうか。実はこの選び方ひとつで、勝てるかどうかが大きく変わります。
この記事を読み終えると、次の3つが分かります。
- 「自分が詳しい領域を選べ」が、なぜそれだけでは不十分なのか
- 勝てる市場を見抜く基準(仲介による情報の格差の大きさ)とそのチェック方法
- 選んだニッチが正しいかを確かめる3ステップの検証手順
まずは、多くの人が信じている定番アドバイスを疑うところから始めてみましょう。
「自分が詳しい領域を選べ」だけでは勝てない理由
ニッチ選びでよく聞くのが「自分が好きで詳しい分野を選びなさい」というアドバイスです。出発点としては悪くありません。ただ、ビジネスには「困っている人がいる構造」が欠かせず、詳しい領域ほどこの構造が生まれにくいのです。
なぜでしょうか。詳しい分野は、あなた自身がすでに人脈や共通言語を持つ世界です。当事者同士が自力でつながれてしまうので、橋渡し役の出番がありません。「サッカー好き向けの連絡アプリ」を作っても「SNSで足りるよね」となるのと同じです。
ここで安心してほしいのは、必要なのが深い専門知識ではない点です。求められるのは「買い手と売り手が互いに見つけられずすれ違っている構造を見抜く目」です。外側の目だからこそ、見過ごされた不便に気づけることもあります。
勝てる市場の基準は「仲介による情報非対称性の高さ」
では、何を基準に選べばいいのでしょうか。鍵になるのが「情報の非対称性」です。これは、片方が持っている情報をもう片方が持っていない状態、つまり売り手と買い手のあいだに情報の格差がある状態を指します。
たとえば中古車だと、売り手だけが本当の状態を知っていて、買い手には見分けがつきませんよね。経済学者のアカロフはこれを理論化し、のちにノーベル経済学賞を受賞しました。情報の格差は、それくらい取引を壊す力を持っているのです。
身近な例だと、腕の良い職人を探したい施主と、仕事が欲しい職人。両者とも相手を求めているのに出会えていません。だからこそ建設やリフォームの世界では、この溝を埋めるマッチングサービスがいくつも成り立っています。
情報の溝が深い市場ほど、放っておくと取引が成立しません。だからこそ、つなぐだけで価値が生まれ、仲介者が手数料を受け取れます。この情報格差の大きさこそが、個人でも勝てる市場かを見分ける物差しになるのです。
情報非対称性を見抜く3つのコストと勝てる市場の逆算評価
情報の格差が大きい市場は、3つの「コスト(手間)」が高いという特徴で見抜けます。
- 探すコスト。そもそも相手が見つかりません(腕の良い便利屋を近所で探すのは一苦労ですよね)
- 選ぶコスト。素人には良し悪しが判断しにくいものです(リフォーム業者の腕は事前に分かりません)
- 信用確認コスト。相手が信頼できるか確かめにくいです(家事代行に家を任せて大丈夫か不安になります)
この3つが揃って高い市場ほど、橋渡しの価値が大きくなります。逆に1つでも自力で解決できると、仲介の存在意義は薄れてしまいます。
魅力が確認できたら、次は「自分が勝てるか」を3つの問いで逆算しましょう。まずは参入余地があるか。大企業が採算の合わない小さなニッチを見送っているかを見ます。次に強い競合が不在か。そのニーズを丸ごと満たす大手がいないかを確かめます。最後に自分が信用を担保できるか。相手が安心できる仕組みを用意できるかが問われます。この物差しを持つだけで、時間とお金を無駄にする不安はぐっと減らせるはずです。
選んではいけないニッチの見分け方
逆に、避けたほうがよい市場もあります。一見ニーズがありそうで、実は仲介の出番がないケースです。次の問いで判定してみてください。
- 当事者は自力で相手を見つけられるか
- 素人でも良し悪しを判断できるか
- すでに大手がそのニーズを丸ごと解決していないか
どれか1つでも「はい」なら赤信号です。つなぐ手間が要らない市場では、そもそも仲介報酬が発生しません。1回つなげば後は当事者同士が直接やり取りに流れる市場も、手数料が積み上がらないので気をつけましょう。
選んだニッチが正しいかを確かめる3ステップ
最後に、候補のニッチが本当に「勝てる市場」かを確かめましょう。ここでの検証は「情報の格差が本当に実在するか」を机上で確かめるところまでに絞ります。
ステップ1は、買い手が本当に困っているかです。気をつけたいのが聞き方ですね。「このサービス使いますか?」と未来を尋ねると、相手は気をつかって「いいね」と答えてしまいます。私も最初これで何度か手応えを勘違いしました。代わりに「最近それで困ったのはいつ?そのとき何をしました?」と過去の行動を聞きましょう。Yahoo!知恵袋やSNS、検索のサジェストでも生の困りごとが拾えます。合格ラインは、「探せなくて困った」という声が2〜3件すぐ見つかることです。
ステップ2は、売り手も困っているかです。マッチングは買い手と売り手の両方が困って初めて成立します。買い手が困っていても、提供者側が困っていなければ誰も登録してくれません。合格ラインは、買い手の困りごとと裏表でつながる売り手の声が見つかることです。
ステップ3は、今ある手段で埋まっていないかです。両側が困っていても、SNSのDMや知人の紹介で間に合っていれば参入余地はありません。合格ラインは、既存の手段に「面倒・高い・質が低い」といった不満が残っていることです。未解決の不満があれば、そこにチャンスありと判断できます。
ここまでをふり返ります。詳しさだけでは勝てません。基準は情報の格差の大きさで、3つのコストで見抜き、つなぐ手間が要らない市場は避け、最後に3ステップで格差が実在するか確かめる、という流れでした。
まずは候補を1つ挙げて、3ステップで情報の格差が実在するか確かめてみてください。正直、ここで合格する市場はそう多くありません。でも、1つでも欠けていたらニッチ選びに戻ればいいだけなので、気負わず試してみてくださいね。検証の先の、実際にどう形にしていくかは別の記事で扱っています。興味があれば、そちらものぞいてみてください。