WordPressで空き家バンク・遊休不動産のマッチングサイトを作る方法|市町村での絞り込みと物件写真の見せ方
空き家バンクを持っている自治体は多いのですが、実態はPDFの一覧表だったり、更新のたびに担当者が手作業でページを直していたりします。物件が20件を超えたあたりから、探す側は「どこの市町村か」「そのまま住めるのか」が一覧で分からず、載せる側も更新が追いつかなくなります。
この記事では、空き家を集めた「AkiyaLink」というデモサイトをWordPressで構築しながら、市町村での絞り込みや物件写真の見せ方をどう組み立てるかをまとめました。自治体の移住定住担当、地域の不動産会社、空き家の活用に取り組む団体などを想定した内容です。
なお、本記事で使用している画面キャプチャは2026年7月時点のものです。
この記事を読むと、次のことがわかります。
- 空き家・遊休不動産のマッチングサイトに必要な機能を整理できます
- WordPressで実現する際の選択肢と、それぞれの向き・不向きがわかります
- MatchLayerを使って市町村で絞り込めるサイトを構築する手順を追えます
空き家・遊休不動産のマッチングサイトに必要な機能
まず、このタイプのサービスに求められる機能を整理します。物件を並べるだけなら固定ページでも作れますが、探す側が条件で絞り込めて、所有者と連絡が取れる状態にするには、いくつか仕組みが必要です。
| 機能 | 内容 |
|---|---|
| 所有者登録・プロフィール | 所有者の区分・連絡が取りやすい時間帯・活用への考え方を登録できる |
| 物件の掲載 | 「築90年の古民家」など、物件ごとに掲載できる |
| 物件種別での検索 | 戸建て・店舗・土地といった種類で絞り込める |
| 市町村での絞り込み | 県内のどの市町村にある物件かで探せる |
| 建物の状態での絞り込み | そのまま住めるのか、改修が必要なのかで探せる |
| 活用条件の明示 | 売却のみか賃貸のみか、どちらも可かを掲載できる |
| 物件写真の掲載 | 外観だけでなく内装や周辺の様子を複数枚見せられる |
| 問い合わせとメッセージ | 現地の様子や引き渡し条件を、所有者に直接聞ける |
| 会員登録フォーム | 所有者側・活用希望者側でロールを分けて登録できる |
不動産の取引には宅地建物取引業法をはじめとする法規制が関わります。自治体の空き家バンクのように所有者と希望者の連絡を仲介するにとどめるのか、事業者として取引に関与するのかで扱いが変わるため、運営の形態は事前に専門家や所管の窓口へご確認ください。この記事はサイトの作り方に絞って説明しますのでご注意ください。
WordPressで実現する方法(選択肢を比較)
WordPressで空き家のマッチングサイトを作る際の選択肢は大きく3つあります。
固定ページと投稿で作る方法
いちばん手軽な方法で、実際に多くの空き家バンクがこの形です。ただし物件が増えると、市町村や物件種別での絞り込みができないため、探す側は上から順に見ていくことになります。担当者にとっても、掲載・成約・取り下げのたびに本文を書き換える運用は負担が大きくなります。
不動産テーマ・カスタム投稿タイプで作る方法
不動産向けのWordPressテーマや、カスタム投稿タイプを使って物件データベースを作る方法です。絞り込み検索は実現できますが、所有者が自分で登録して問い合わせを受け取る仕組みは別途作ることになります。運営側がすべての物件を代理入力する前提なら、この方法でも回ります。
マッチング特化プラグインを使う方法
MatchLayerはマッチングサイトに特化したWordPressプラグインで、物件の登録・都道府県と市区町村での絞り込み・メッセージ・画像ギャラリーなどの機能を最初から持っています。「空間のマッチング」プリセットを選ぶだけで、所有者と活用希望者の分離登録に対応した土台が整います。所有者自身に登録してもらう運用にしたい場合に向いています。
MatchLayerでAkiyaLinkを構築する手順
ここからは実際の構築手順を追います。今回作るデモサイト「AkiyaLink」は、島根県の空き家・遊休不動産を集めた県特化型のサイトです。物件の種類・市町村・建物の状態から探して、所有者に直接問い合わせできる形にします。
ステップ1:サイトジャンルに「空間のマッチング」を選ぶ
MatchLayerをインストールしたら、最初にサイトジャンル設定からプリセットを選びます。管理画面の「サイトジャンル設定」にアクセスし、「空間のマッチング」を選んで適用します。

空き家は場所を扱うので、このプリセットが土台になります。適用すると都道府県機能がオンになり、カレンダーもオンになります。都道府県はそのまま使いますが、カレンダーはあとでオフにします。理由はステップ3で説明します。
ステップ2:一般設定で呼称と機能を決める
「一般設定」→「サイト全体」タブを開きます。
- リスティング呼称を「物件」に変更します(プリセット適用直後は「スペース」になっています)
- ユーザーモードは「分離モード(提供者/利用者)」のままにします(所有者と活用希望者は役割が異なるためです)
- レビュー機能のチェックを外してオフにします
- 都道府県機能は有効のままにします

レビューをオフにしたのは、空き家の取引が一回性だからです。飲食店や教室のように同じ相手と何度も取引する場ではないので、評価が蓄積しません。
ステップ3:マッチングの条件を決める
「マッチング」タブに移ります。ここでは3つ変更します。
- メッセージ送信タイミングを「成立前から可」に変更します
- 重複申込みを「許可しない」に変更します
- カレンダー・予約機能のチェックを外してオフにします

メッセージを「成立前から可」にしたのは、空き家は現物を見ないと判断できないからです。「家財はどこまで残っていますか」「井戸は使えますか」といった質問が問い合わせの段階で出てきます。ここでやり取りできないと、興味を持った人が離れてしまいます。
重複申込みを「許可しない」にしたのは、同じ物件に何度も問い合わせが飛ぶのを防ぐためです。予約サービスなら「毎週通いたい」という理由で再申込みが必要になりますが、空き家では1件につき1回で足ります。
カレンダーをオフにしたのは、空き家が時間貸しではないからです。会議室やレンタルスペースなら「7月27日の14時から2時間」を押さえる必要がありますが、空き家の見学は「今度の土日はいかがですか」と個別に相談するものです。ここは最後まで迷いました。見学の日程調整に使えるなら残しておいてもいいのでは、と一度は考えたからです。ただ、所有者が毎週の空き枠を入れ続ける姿がどうしても想像できなくて、結局オフにしました。空欄のカレンダーが並ぶくらいなら、ない方がましです。
ステップ4:都道府県と市町村を用意する
このサイトの要になる設定です。「都道府県設定」メニューを開きます。
やることは2つあります。まず、島根県以外の地方に「非表示」のチェックを入れます。中国・四国地方だけはチェックを外したうえで、島根県以外の県を個別に非表示にします。これで、登録フォームと検索の選択肢が島根県だけになります。
もう1つが市区町村の読み込みです。画面上部の「全国を一括読み込み」ボタン、または各県の「市区町村を編集」からシードデータを読み込めます。島根県で読み込むと19件の市町村が登録されます。

市町村をテキスト入力のカスタムフィールドで持たせる方法もありますが、こちらの機能を使うほうが後で楽です。テキスト入力だと「雲南市」「島根県雲南市」「雲南市木次町」と表記がばらつき、絞り込みが効かなくなります。マスタから選ぶ方式なら表記が揃い、検索条件としてそのまま使えます。
合併前の地名で探す人がいる、といった事情があれば、この画面で市町村名を編集したり項目を追加したりできます。
ステップ5:物件種別のカテゴリを階層で設定する
「カテゴリ設定」メニューから、カテゴリを追加します。今回は大分類を親カテゴリ、具体的な種別を子カテゴリにした階層構成にしました。
- 戸建て(平屋/2階建て以上/古民家)
- 店舗・事務所(路面店舗/事務所・オフィス/空き倉庫)
- その他の建物(アパート・集合住宅/蔵・納屋)
- 土地(宅地/農地・山林)

「古民家を探している」という人と、「とりあえず住める家を見たい」という人では入り方が違います。親子で持たせておくと、大分類からも具体的な種別からもたどり着けます。
なお、市町村はカテゴリに入れないほうがいいです。「戸建て/店舗/雲南市/松江市」と混在すると、物件種別を足すときも並び順を整えるときも扱いづらくなります。地域はステップ4の機能で扱います。
ステップ6:カスタムフィールドを追加する
「登録フォーム設定」からプロフィール用・物件用のカスタムフィールドを追加します。
所有者(提供者)のプロフィール用に、次の3項目を設定しました。
- 所有者の区分(セレクトボックス:個人所有者・法人・自治体、公的機関・不動産事業者/必須)
- 連絡が取りやすい時間帯(テキスト)
- 空き家の活用について考えていること(テキストエリア/必須)
活用希望者(利用者)側には「活用の目的」と「希望する時期」を設定しました。

「所有者の区分」を入れたのは、空き家バンクでは自治体が所有者に代わって掲載することがあるからです。窓口が載せているのか、所有者本人が載せているのかが分かると、問い合わせる側の身構え方が変わります。
「空き家の活用について考えていること」を必須にするかどうかは、かなり迷いました。自由記述の必須項目は入力の手間になるので、登録の途中で手が止まる人が出るかもしれません。それでも必須にしたのは、この欄が空っぽの物件は結局どれも同じに見えてしまうと感じたからです。空き家は条件だけで決まるものではなく、「誰に使ってほしいか」という所有者の気持ちが判断に影響します。ただ、実際に運用したときにどれくらい離脱するかまでは確かめられていないので、ここは自信を持って断言できません。
続いて「物件用」タブに切り替えて、物件ごとのフィールドを追加します。
- 活用の条件(セレクトボックス:売却のみ・賃貸のみ・売却、賃貸どちらも・要相談/必須)
- 建物の構造(セレクトボックス:木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造・土地のみ/必須)
- 築年数(セレクトボックス:10年未満〜50年以上、土地は該当なし/必須)
- 現在の状態(セレクトボックス:そのまま住める・軽微な修繕が必要・大規模な改修が必要・解体を前提/必須)
- 間取り・面積(テキスト)
- 価格・賃料の目安(テキスト)
- 最寄り駅・交通アクセス(テキスト)
- 引き渡しの条件・注意事項(テキストエリア)

このうち「活用の条件」「建物の構造」「築年数」「現在の状態」の4つを検索対象に設定しました。検索対象にしたフィールドは、物件一覧の絞り込み条件として自動的に表示されます。
「現在の状態」を検索できるようにしたのは、探す側の関心がここに集まるからです。すぐ住みたい人と、自分で直したい人では、見たい物件がまったく違います。「大規模な改修が必要」と最初に書いてあれば、期待とのずれによるやり取りが減ります。
価格は専用の機能ではなくテキストのフィールドで扱っています。「売却350万円 / 賃貸 月3万円(応相談)」のように、条件を添えて書けるほうが空き家には合うためです。
ステップ7:トップページのテキストを設定する
「トップページ設定」でブランドカラーとヒーロー画像、それに各セクションのテキストを設定します。

プリセットを適用した直後は「必要な場所を、必要な時間だけ。」といった時間貸しを想定した文言が入っています。ここを「物件を探す」「所有者に問い合わせる」「見学して決める」のように書き換えます。
ステップ2でレビューをオフにしているので、トップページの口コミセクションも非表示にしておきます。
ステップ8:物件を登録する
設定が完了したら、所有者のアカウントで物件を登録します。「物件を掲載する」リンクから登録フォームにアクセスします。

所在地の指定は2段階です。「都道府県を選択」ボタンで島根県を選ぶと、その下に島根県の市区町村を選ぶ欄が現れます。ステップ4で市区町村を読み込んでいないと、この欄は出てきません。
画面のいちばん下が画像ギャラリーです。最大5枚まで登録でき、最初の画像が一覧カードと詳細ページのメイン画像になります。空き家では外観だけでは判断できないので、この5枚をどう使うかが問い合わせの数を左右します。外観・玄関まわり・水回り・傷んでいる箇所・周辺の環境というように役割を割り振ると、少ない枚数でも情報量が出ます。
傷んでいる箇所を載せるのは、正直なところ勇気がいります。それでも、隠したところで見学に来ればわかる話です。個人的には5枚のうち1枚は劣化のわかる写真を入れたほうがいいと思っています。そのほうが見学したあとの落差が減りますし、覚悟のある人だけが問い合わせてきます。
登録した物件は、マイページの「物件管理」タブで一覧できます。

完成したデモサイトの確認
すべての設定が終わったトップページがこちらです。

物件一覧では、ステップ6で検索対象に設定したフィールドが絞り込み条件として並びます。

「古民家で、大規模な改修が必要で、売却・賃貸どちらも可」という条件で絞り込めます。カードには物件種別と市町村まで出るので、開かなくてもある程度の判断ができます。
都道府県で島根県を選ぶと、市町村のチェックボックスが現れます。

「実家のある雲南市と、隣の奥出雲町だけ見たい」といった絞り込みができます。移住先を検討している人は、通勤先や実家からの距離で候補地を決めることが多いので、この一段が効いてきます。
各物件の詳細ページには、説明文の下にカスタムフィールドの内容が並びます。

下部の「マッチング申込み」から問い合わせます。「成立前から可」にしているので、ここでメッセージを添えて送れます。
所有者名をクリックすると、プロフィールページに移動します。

物件の詳細が「その家の情報」だとすると、こちらは「誰が手放そうとしているか」です。自治体の窓口なのか個人の所有者なのかが分かり、活用への考え方も読めます。ステップ6で必須にした欄が効いてくるのはこの画面です。
会員登録フォームでは、所有者として登録するか、活用希望者として登録するかを選べます。

よくある質問
Q. 市町村での絞り込みはどう設定しますか?
「都道府県設定」画面で市区町村のシードデータを読み込むと、登録フォームと検索フォームに市区町村の選択肢が現れます。カスタムフィールドを作る必要はありません。読み込んだあとに名前を編集したり、対象外の市町村を削除したりもできます。
Q. 県全体ではなく、1つの市町村だけを対象にできますか?
できます。都道府県設定でその県以外を非表示にしたうえで、市区町村の一覧から対象外の市町村を削除すれば、登録フォームの選択肢がその市町村だけになります。単独の自治体で運営する場合はこの形になります。
Q. 全国の空き家を扱うサイトにもできますか?
できます。この記事では島根県だけを表示する設定にしましたが、都道府県設定で地方の非表示チェックを外せば全国から選べます。その場合は「全国を一括読み込み」で全都道府県の市区町村をまとめて登録しておくと、どこの物件でも市町村まで指定できます。
Q. 写真は何枚まで載せられますか?
1件につき最大5枚です。最初の画像が一覧カードと詳細ページのメイン画像になります。枚数が限られているので、外観・内部・水回り・傷んでいる箇所・周辺環境というように役割を決めて選ぶと、少ない枚数でも判断材料になります。
Q. 成約した物件はどうしますか?
マイページの物件管理から受付停止に切り替えると、一覧に表示されなくなります。
Q. 決済機能はありますか?
MatchLayer単体では決済機能を持っていません。空き家の売買や賃貸借は契約手続きを伴うため、このサイトが担当するのは物件と活用したい人が出会って連絡を取り合うところまでです。
Q. 自治体が運営する場合、所有者に代わって掲載できますか?
できます。このデモサイトでも、市の窓口が所有者から預かった物件を掲載する形にしています。所有者のプロフィールに「所有者の区分」を持たせておくと、窓口が載せているのか本人が載せているのかを閲覧者に伝えられます。
まとめ
WordPressで空き家・遊休不動産のマッチングサイトを作るときは、「どこにあるか」と「どんな状態か」で絞り込める状態を作ることが出発点になります。MatchLayerであれば「空間のマッチング」プリセットを起点に、コーディングなしでこれらを設定できます。
今回のデモサイト「AkiyaLink」で設定した内容を整理します。
- サイトジャンルは「空間のマッチング」プリセットを適用します
- リスティング呼称を「物件」に変更します
- レビュー機能をオフにします(取引が一回性で評価が蓄積しないためです)
- メッセージ送信タイミングは「成立前から可」にします(現地の様子を問い合わせ段階で聞けるようにするためです)
- 重複申込みは「許可しない」にします(同じ物件への重複した問い合わせを防ぐためです)
- カレンダー機能はオフにします(空き家は時間貸しではなく、見学は個別に相談するためです)
- 都道府県設定で対象の県以外を非表示にし、その県の市区町村を読み込みます
- カテゴリは物件種別の階層構成にします(4親カテゴリ+子カテゴリ10件)
- カスタムフィールドは物件側に活用の条件・建物の構造・築年数・現在の状態を置き、この4つを検索対象にします
空き家の情報は、条件表だけでは伝わりません。写真5枚と「どう使ってほしいか」という所有者の言葉が、条件の一致以上に問い合わせを動かします。同じ仕組みを応用すれば、空き店舗の活用、農地や倉庫の貸し出し、公共施設の跡地活用なども扱えます。まずは対象地域を1つの県か市町村に決めるところから始めてみてください。