WordPressで産学連携・研究シーズのマッチングサイトを作る方法
WordPressとMatchLayerを使って、産学連携・研究シーズのマッチングサイトを作る方法を紹介します。大学・公設試の研究者と企業をつなぐデモサイト「LabConnect」を例に、具体的な構築手順を紹介します。
この記事を読むと、次のことがわかります。
- 産学連携・研究シーズのマッチングサイトに必要な機能を整理できます
- 用意されたプリセットが当てはまらない場合に、必要な項目や設定をどう決めればよいかがわかります
- 掲載内容を公開前に確認する仕組みの作り方がわかります
なお、本記事で使用している画面キャプチャは2026年7月時点のものです。
産学連携・研究シーズのマッチングサイトに必要な機能
まず、このタイプのサービスに求められる機能を整理します。研究シーズは、企業が探す側にとって内容の理解が難しく、掲載する側にとっては書ける範囲に制約があります。探す側と載せる側、その両方に目を配りながら設計することになります。
| 機能 | 内容 |
|---|---|
| 研究者登録・プロフィール | 所属機関・部局・職位・専門分野・研究業績を登録できる |
| 研究シーズの掲載 | 「廃棄アルミの低温接合技術」など、シーズ単位で掲載できる |
| 研究分野での検索 | ライフサイエンス・情報・ものづくりといった分野で絞り込める |
| 連携形態での絞り込み | 共同研究・受託研究・ライセンス供与などの形で探せる |
| 技術の成熟度の明示 | 基礎研究の段階か、実用化が近いのかを掲載できる |
| 知的財産の状況の明示 | 特許の取得済み・出願済みなどを掲載できる |
| 掲載内容の事前確認 | 公開する前に、産学連携本部が内容を確認できる |
| 問い合わせとメッセージ | 企業から研究者へ直接相談できる |
| 会員登録フォーム | 研究者側・企業側でロールを分けて登録できる |
知的財産の項目は、あくまで「掲載時点でどういう状況か」を伝えるための欄です。実際の権利の帰属や契約条件は各機関の規程に沿って決まるものなので、サイトの表示だけで判断せず、担当部署の確認を挟む運用にしてください。
WordPressで実現する方法(選択肢を比較)
WordPressで研究シーズのデータベースを作る際の選択肢は大きく3つあります。
固定ページとPDFで公開する方法
現在いちばん多い形です。作るのは簡単ですが、企業が分野や連携形態で絞り込めません。研究者が増えるほど更新の負担が担当者に集中し、内容が古いまま残りやすくなります。
カスタム投稿タイプでシーズ集を作る方法
カスタム投稿タイプとカスタムフィールドでシーズのデータベースを作る方法です。絞り込み検索は実現できます。ただし、研究者自身が登録して企業からの問い合わせを受け取る仕組みと、公開前に事務局が内容を確認する流れは、別途作り込むことになります。
マッチング特化プラグインを使う方法
MatchLayerはマッチングサイトに特化したWordPressプラグインで、シーズの登録・カスタムフィールドでの絞り込み・問い合わせ・掲載審査などの機能を最初から持っています。研究者に自分で登録してもらい、事務局が確認してから公開する、という運用に向いています。
MatchLayerでLabConnectを構築する手順
ここからは実際の構築手順を追います。今回作るデモサイト「LabConnect」は、大学と公設試の研究シーズを集めたサイトです。企業が分野・連携形態・技術の成熟度から探して、研究者に直接問い合わせできる形にします。
ステップ1:サイトジャンルで「汎用」を選ぶ
MatchLayerをインストールしたら、最初にサイトジャンル設定を開きます。

用意されているのは、モノのマッチング・人のマッチング・予約型サービス・スペースレンタル・汎用の5つです。研究シーズはこのうちのどれでしょうか。
人でもモノでもありません。予約するものでも、場所を借りるものでもありません。強いて言えば「人のマッチング」が近いのですが、これは案件と人材を結ぶ想定で入っているため、初期値が研究シーズには噛み合いません。
こういうときに選ぶのが「汎用」です。説明にも「現在の設定をそのまま使う」と書いてあるとおり、これを選んでも設定は何ひとつ変わりません。
つまりここから先は、初期値に頼らず全部自分で決めることになります。手間は増えますが、そのぶん「なぜその設定なのか」を一つずつ考えられます。
ステップ2:一般設定で呼称と公開のルールを決める
「一般設定」→「サイト全体」タブを開きます。
- リスティング呼称を「研究シーズ」に設定します(未設定のままだと「リスティング」と表示されます)
- ユーザーモードは「分離モード(提供者/利用者)」にします(研究者と企業は役割が異なるためです)
- レビュー機能のチェックを外してオフにします
- 都道府県機能を有効にします(研究機関の所在地で絞り込めるようになります)

レビューをオフにしたのは、研究を星の数で評価するのが馴染まないからです。企業との連携がうまくいったかどうかは、研究の質だけでなく双方の体制や予算にも左右されます。それを5段階で公開すると、研究者が掲載をためらう理由にしかなりません。
ステップ3:掲載内容を公開前に確認する設定にする
この記事の主題のひとつです。「一般設定」→「入口(公開・登録)」タブを開き、研究シーズ承認を「毎回承認が必要」に変更します。

選択肢は3つあります。「承認不要(即時公開)」は登録すればそのまま出る形、「初回のみ承認が必要」は最初の1回だけ確認する形、「毎回承認が必要」は編集のたびに確認する形です。
産学連携で「毎回」を選ぶ理由は、研究者が書ける範囲に制約があるからです。特許の出願前に公開してはいけない内容が含まれていないか、企業との既存の契約に触れないか、といった確認は事務局でないと判断できません。一度確認したあとの編集で内容が書き足されることもあるので、初回だけでは確認しきれない場面があります。
この設定にすると、管理画面に「研究シーズ審査」というメニューが追加されます。
なお、案件閲覧権限は「全員に公開」のままにしています。研究シーズは広く知ってもらってこそ声がかかるものなので、ここを会員限定にすると企業が見つけられなくなります。
ステップ4:マッチングの条件を決める
「マッチング」タブに移ります。
- メッセージ送信タイミングを「成立前から可」に変更します
- 重複申込みを「許可する」に変更します
- カレンダー・予約機能はチェックを外してオフのままにします

メッセージを「成立前から可」にしたのは、企業からの最初の接触が「これはうちの課題に使えますか」という質問だからです。ここで会話できないと、判断がつかないまま離れてしまいます。掲載されている内容は事務局の確認を通ったものなので、この段階でやり取りしても差し支えありません。
重複申込みを「許可する」にしたのは、同じ研究室と何度も相談する場面があるからです。まず技術相談から入り、後日あらためて共同研究として申し込む、といった進み方をします。「許可しない」にすると、一度問い合わせた研究シーズには二度と申し込めなくなります。
カレンダーをオフにしたのは、研究相談の日程が個別調整だからです。研究者が空き枠を登録し続ける運用は現実的ではありません。
ステップ5:研究分野のカテゴリを階層で設定する
「カテゴリ設定」メニューから、カテゴリを追加します。今回は大分類を親カテゴリ、具体的な分野を子カテゴリにした階層構成にしました。
- ライフサイエンス(医療・創薬/バイオ・食品/農学・環境)
- 情報・数理(AI・機械学習/データ解析/情報セキュリティ)
- ものづくり・素材(材料・化学/機械・ロボティクス/電子デバイス)
- エネルギー・環境(再生可能エネルギー/環境・資源循環)
- 人文社会・地域(地域振興・観光/教育・人材育成)

企業側は「AIで検査を自動化したい」と具体的に決まっていることもあれば、「ものづくり全般で相談できる先を探している」という段階のこともあります。親子で持たせておくと、どちらの入り方にも対応できます。
人文社会・地域を入れているのは、産学連携が理工系だけのものではないからです。観光振興や人材育成の分野でも企業との連携は生まれます。分野の一覧に載っていないと、その研究室は最初から候補に入りません。
ステップ6:カスタムフィールドを追加する
「登録フォーム設定」からプロフィール用・研究シーズ用のカスタムフィールドを追加します。
研究者(提供者)のプロフィール用に、次の5項目を設定しました。
- 所属機関(テキスト/必須)
- 部局・研究科(テキスト/必須)
- 職位(セレクトボックス:教授・准教授・講師・助教・研究員・その他/必須)
- 専門分野(テキスト/必須)
- 主な研究業績・産学連携の実績(テキストエリア)
企業(利用者)側には「会社名」「業種」「連携で解決したい課題」を設定しました。

「主な研究業績・産学連携の実績」を用意したのは、企業が知りたいのは論文数よりも「企業と組んだ経験があるか」だからです。学会発表の一覧より、これまで何社と何をやってきたかのほうが判断材料になります。
続いて「研究シーズ用」タブに切り替えて、シーズごとのフィールドを追加します。
- シーズの概要(公開できる範囲で)(テキストエリア/必須)
- 想定される応用分野(テキスト/必須)
- 連携の形態(セレクトボックス:共同研究・受託研究・技術指導、コンサルティング・ライセンス供与・要相談/必須)
- 技術の成熟度(セレクトボックス:基礎研究の段階・応用研究の段階・試作、実証の段階・実用化が近い段階/必須)
- 知的財産の状況(セレクトボックス:特許取得済み・特許出願済み・出願を準備中・出願の予定なし/必須)
- 連携にあたっての条件・注意事項(テキストエリア)

このうち「想定される応用分野」「連携の形態」「技術の成熟度」「知的財産の状況」の4つを検索対象に設定しました。検索対象にしたフィールドは、一覧の絞り込み条件として自動的に表示されます。
「技術の成熟度」を入れたのは、産学連携で期待がずれやすいのがここだからです。企業は「使える技術」を探して来ますが、大学のシーズは基礎研究の段階のものも多くあります。最初に段階を示しておけば、「すぐ製品化できると思っていた」という食い違いを減らせます。
この選択肢をいくつに区切るかは、正直かなり迷いました。細かく分けるほど正確になりますが、研究者が自分のシーズをどこに当てはめればいいか迷います。今回は4段階に落ち着かせたものの、実際に研究者に入力してもらったわけではないので、運用してみたら3段階に減らすかもしれません。
フィールド名を「シーズの概要(公開できる範囲で)」としているのも意図があります。研究者に書いてもらう欄の名前に条件を入れておくと、未公開の内容をうっかり書き込むことを入力の時点で思いとどまってもらえます。
ステップ7:トップページのテキストを設定する
「トップページ設定」でブランドカラーとヒーロー画像、それに各セクションのテキストを設定します。

汎用を選んだ場合、ここも初期値のままです。他のプリセットならジャンルに合った文言が入っているところですが、今回は「研究シーズを探す」「研究者に問い合わせる」「連携の形を決める」まで自分で書きます。「MatchLayerの使い方」という見出しも、サイト名を使った「LabConnectの使い方」に変更できます。
ステップ2でレビューをオフにしているので、トップページの口コミセクションも非表示にしておきます。
ステップ8:研究シーズを登録する
設定が完了したら、研究者のアカウントでシーズを登録します。「研究シーズを掲載する」リンクから登録フォームにアクセスします。

登録したシーズは、マイページの「研究シーズ管理」タブで一覧できます。

ステップ3で「毎回承認が必要」にしているので、登録しただけでは公開されません。事務局の確認を待つ状態になります。
ステップ9:掲載内容を確認して公開する
管理画面の「研究シーズ審査」メニューを開くと、承認待ちのシーズが並びます。メニュー名の横には件数が表示されるので、確認漏れに気づきやすくなっています。

「プレビュー」で実際の見え方を確認してから、「承認」か「却下」を選びます。承認すると一覧に載り、却下すると差し戻されます。
産学連携本部にとっては、この画面が日々の作業場所になります。研究者から届いたシーズを開いて、公開できない内容が含まれていないかを確認して、問題がなければ承認します。この一手間が入るだけで、シーズ集を事務局が全部代筆していた頃と比べて負担が大きく変わります。
完成したデモサイトの確認
すべての設定が終わったトップページがこちらです。

「掲載研究シーズ」の数は、審査を通って公開されているものだけを数えています。承認待ちのシーズは含まれません。
研究シーズ一覧では、ステップ6で検索対象に設定したフィールドが絞り込み条件として並びます。

「共同研究ができて、試作・実証の段階まで進んでいて、特許が出願済み」という条件で絞り込めます。企業の担当者が社内で稟議を通すときに必要な情報が、そのまま検索条件になっています。
各シーズの詳細ページには、説明文の下にカスタムフィールドの内容が並びます。

下部の「マッチング申込み」から問い合わせます。「成立前から可」にしているので、ここでメッセージを添えて送れます。
研究者名をクリックすると、プロフィールページに移動します。

シーズの詳細が「その技術の情報」だとすると、こちらは「誰が研究しているか」です。1人の研究者が複数のシーズを出している場合は、このページからまとめて見られます。
会員登録フォームでは、研究者として登録するか、企業として登録するかを選べます。

よくある質問
Q. 「汎用」を選ぶと何が起きますか?
何も起きません。設定は変更されず、初期値のままになります。他の4つのプリセットは、そのジャンルに合わせて呼称・カレンダー・レビューなどをまとめて設定してくれますが、汎用はそれをしません。どのジャンルにも当てはまらないときに、自分で全部決めるための選択肢です。
Q. 途中で他のプリセットに変えられますか?
変えられます。ただし、サイトジャンル設定の画面にも「ジャンルを再選択すると、設定とトップページ文言が上書きされます」と書かれているとおり、手で設定した内容やトップページのテキストは消えます。作り込んだあとの変更は避けたほうが安全です。
Q. 掲載審査は「初回のみ」と「毎回」のどちらがよいですか?
運用の手間と確認の確実さのバランスで決まります。「初回のみ」は、一度承認したシーズを研究者が編集しても再審査されません。登録数が多く事務局の人数が限られている場合はこちらが現実的です。公開してよい範囲の判断が重要な分野では「毎回」を選ぶことになります。
Q. 承認待ちのシーズは企業から見えますか?
見えません。一覧にも詳細にも出ず、トップページの掲載件数にも含まれません。承認した時点で公開されます。
Q. 決済機能はありますか?
MatchLayer単体では決済機能を持っていません。共同研究費やライセンス料は契約に基づいて処理されるものなので、このサイトが担当するのは研究者と企業が出会って相談を始めるところまでです。
Q. 知的財産の欄はどこまで書いてもらえばよいですか?
「特許出願済み」「出願を準備中」といった状況の区分にとどめ、出願番号や請求項の内容までは書かせないほうが安全です。この記事の設計でも選択式にして、自由記述にはしていません。実際の権利の扱いは各機関の規程に沿って決まるものなので、詳細は担当部署とのやり取りに委ねる作りにしています。
まとめ
WordPressで産学連携・研究シーズのマッチングサイトを作るときは、用意されたプリセットが当てはまらないところから始まります。「汎用」を選んで、呼称・公開の範囲・メッセージの条件を一つずつ決めていくことになります。
今回のデモサイト「LabConnect」で設定した内容を整理します。
- サイトジャンルは「汎用」を選びます。設定は何も変わらないので、以降はすべて手動です
- リスティング呼称を「研究シーズ」に設定します
- 掲載審査は「毎回承認が必要」にして、公開できない内容が混ざらないようにします
- レビュー機能はオフにします。研究を星の数で評価するのが馴染まないためです
- メッセージ送信タイミングは「成立前から可」にして、企業からの最初の質問に応えられるようにします
- 重複申込みは「許可する」にします。技術相談から共同研究へと段階が進むためです
- カレンダー機能はオフにします。相談の日程は個別調整になります
- 案件閲覧権限は「全員に公開」のままにして、シーズを広く知ってもらいます
- カテゴリは研究分野の階層構成にします(5親カテゴリ+子カテゴリ13件)
- カスタムフィールドはシーズ側に連携の形態・技術の成熟度・知的財産の状況を置き、検索対象にします
プリセットが当てはまらないのは、扱う対象が既存の型に収まらないということです。それは弱点ではなく、そのジャンルにまだ定型がないというだけのことです。同じ作り方で、公設試験研究機関の技術相談窓口、自治体の企業間連携支援、業界団体の技術ディレクトリなども組めます。
今回作ってみて感じたのは、汎用を選ぶのは遠回りに見えて、設定の意味を一つずつ確かめる近道だということです。まずは自分たちが扱うものが4つのジャンルのどれに近いかを考えて、どれとも違うなら汎用から始めてみてください。